再婚禁止期間とは?女性は離婚後すぐに再婚できない理由
離婚後にすぐに再婚したい場合、男性であればすぐにでも再婚は出来ます。
しかし女性の場合は、基本的には離婚してからすぐには再婚することができません。
離婚後に再婚出来るまでの間に、『再婚禁止期間』というものが法律で定められているためです。
なぜ女性だけに、このような制約が課せられているのでしょうか!?
その理由と『再婚禁止期間』について、紹介します。
再婚禁止期間の概要とこの法律の存在理由
法律で『再婚禁止期間』が定められている理由は、「嫡出推定制度」という制度があるためです。
『嫡出推定制度』とは、生まれた赤ん坊の父親が誰なのかを推定する規定です。
母親が誰であるかは分娩によって疑いの余地なく把握できます。
しかし、父親が誰であるかは、場合によっては明確になっていないことも想定されるため、父親を特定的ない子供が出てきてしまう可能性があります。
そうならないように、父親の存在しない子供が生じる事を防ごぐために、父性推定の規定が設けられたのです。
この『嫡出推定制度』が定められている民法772条は、再婚禁止期間に特に関わりのある規定で、下記のように定められています。
①結婚後(再婚後)200日を過ぎて生まれた子供の父親は現在の夫とされる。
➁離婚後300日以内に生まれた子供の父親は前夫とされる。
このため、離婚後すぐに再婚してしまうと、嫡出推定が重なる期間が100日生じてしまい、前夫と現夫のどちらを子供の父親としていいのか分からない期間が出てくる恐れがあります。
そこで、このような推定の重複による混乱が発生しないようにするために、一定の再婚禁止期間がもうけられたのです。
再婚禁止期間は変更
以前まで、再婚禁止期間は離婚後、6ヶ月間となっていました。
しかし、平成27年12月に最高裁判所が、「女は前婚の解消又は取消しの日から6ヶ月を経過した後でなければ、再婚出来ない。」
という民法733条1項の規定につき、女性の再婚禁止期間6ヶ月のうち、100日を超える部分について憲法違反であるとの判決が出ました。
この判決を受けて、平成28年6月1日に女性の再婚禁止期間を、当時6ヶ月だったものを100日に短縮する、民法733条1項の改正が、参議院本会議で可決され成立しました。
つまり、2018年現在は、女性の再婚禁止期間は離婚後100日間となっています。
離婚後100日以内でも再婚できる特例条件
さらに、民法733条1項の改正により、離婚後100日以内でも再婚できる特例が定められました。
妊娠に関連する特例
離婚時に妊娠していなかった場合や、離婚時に出産した場合には、再婚禁止期間内でも、再婚することが認められるようになったのです。
ただし、この特例を適応して再婚するためには、その事実を証明する必要があります。
具体的には、離婚後100日以内に婚姻届を提出する場合には、婚姻届の提出の際に、次のいずれかの医師による書面を添付する必要があります。
- 「本人が善根の解消又は取消しの日であると申し出た日より後に懐胎していること」
- 「同日以後の一定の時期に懐胎していないこと」
- 「同日以後に出産をしたこと」
離婚後100日以内に再婚できるその他の特例
妊娠に関連する特例以外でも、再婚禁止期間を守らずに、すぐに再婚できる場合があります。
前夫と再婚をした場合には、再婚禁止期間でも結婚が許されます。
これは、当然といえば当然かもしれませんね。
また、妊娠の可能性がない高齢者の再婚も例外として許されています。
さらに、夫が3年以上行方不明で裁判離婚が成立した場合も、例外として再婚が許されています。
子宮の全摘出手術を受けた人は、医師の証明書を裁判所が受理すれば、再婚禁止期間中でも結婚することが出来ます。
女性に再婚禁止期間が設けられている理由が「子供の父親の判別」にあるため、妊娠していないことが分かれば再婚出来るというのは、妥当な考え方と言えるでしょう。
再婚禁止期間を守らない場合のリスク
ちなみにこういった例外を除いて、万が一、この再婚禁止期間の定めを守らず、さらに自治体の戸籍係も気づかずに婚姻届が受理されてしまった場合は、どうなってしまうのでしょうか?
警察に捕まってしまうというようなことはありませんが、再婚後に子供が出来た場合は、裁判所が子供の父親を決めることになってしまいます。
例えば、本当は現夫の子供なのに、裁判所から「この子供は前夫の子供とする」との判決が出てしまったら、その判決に従うしかありません。
そのため、この事態を避けようとするために、母親が子供の出生届を出さずに、子供が「無戸籍児」となってしまう例もあります。
そのようなことにならないよう、くれぐれも再婚禁止期間は守るようにしましょう。